学習の結果か遺伝か
できること/できないことの境目は?
自分は,臨床現場で仕事をしていると,目の前にいる「この人はなにができるのか」をよく考えます。
なにができるのかは,「なにをさせるか」ということではないのは理解していますが,どうしても,「なにをさせるか」を考えがちです。
例えば,お母さんに連れてこられたお子さんの立場で考えてみます。
本人の考えと親の考えを両方聞くことになります。
そうなるとたいてい,親がこうしたい,こうさせたいということがメインに話されます。
(例えば勉強をしないので,させたいなど)
確かに勉強はした方がいいし,その方が将来の道も多いと思います。
でも,そこで考えるべきは,なにができるか,なのかなと。
先日お話を聞かせてくれた方は,
「ここまではできたということを認めてほしい,もっともっとと周りはいう。そのもっともっとという言葉はよくわかる。そうしたいし,そうしなければならない。でも今ここまできた事実があって,それを小さいけど積み重ねて,そのもっともっとに近づけている。それをなかったことにしないでほしい」
と訴えていました。
(ほかのスタッフへの苦情を聞いていた時の内容をデフォルメしています)
できること,これからやれそうなこと,は両方その人の中にあるのだなと,ふと思いました。
では,現状できないのは,なぜなのか。
今までの学習のせいなのか,それとも遺伝的要因なのか。
もし遺伝的要因であるなら,それはあきらめることなのか。
それもその本人の意思によるのか。
いまはこの辺りで考えをまとめています。
まとまりがないないようになりましたが,またなにか思ったことが出たら書こうと思います。
もう過去のこと。DSM5の変更点はこうなるのでは?という話をしたときの資料
ご無沙汰しています。
今日見てみたら,141日も放置していました。
以前から書いておこうと思っていた,DSM5の変更点について,今回記載します。
なお,日本語訳の本が出版される前に作った資料なので,今ではもう古いし,間違いも多数あると思います。
自分の勉強のだめさ加減を記録するためにここに残します。
2013年5月 アメリカ精神医学会作成「精神疾患の診断と統計のためのマニュアル第5版 Diagnostic statistical manual of mental disorders 5th edition:DSM-5」が出版
DSM-Ⅳ(1994)→DSM-Ⅳ-TR(2000)→DSM-5(2013):13年ぶりの改定となる。
2.DSM-Ⅲとカテゴリー診断学
1980年出版 DSM-Ⅲ(DSM-Ⅰ:1952,DSM-Ⅱ:1968):カテゴリー診断学を採用
カテゴリー診断学:ある疾患において,典型的な症状をいくつかあげて,そのうちいくつ以上がそろっていれば診断ができるという診断方法
(病因は問われず症状のみで診断を行う)
3.変更点一覧
(1)多軸診断から多元的診断
DSM-Ⅲから多軸診断が採用:5つの異なった側面の評価を行って総合的に診断を実施
第Ⅰ軸 臨床疾患 臨床的関与の対象となることのある状態(ただし パーソナリティ障害および精神遅滞は除く)そのすべて。
第Ⅱ軸 パーソナリティ障害 精神遅滞
第Ⅲ軸 身体的疾患 精神疾患へ理解、または管理に関する可能性のある現存の一般身体疾患
第Ⅳ軸 心理社会的および環境的問題 第Ⅰ軸,第Ⅱ軸の診断,治療,予後に影響することのあるもの
不幸な出来事や環境的な困難,対人関係上のストレスなどの心理社会的ストレッサーの強さの程度
第Ⅴ軸 機能全体の全体評定 過去1年間の最高の適応状態を判断
→これらの多軸が完全に廃止したわけではないが,多元的診断へ
1)精神疾患の様々なレベルの変動,あるいは重複,変遷にも言及可能に
2)重症度という問題に,臨床的な尺度を用いて判定することを採用
3)カテゴリー診断は陽性か陰性か。多元的診断はスペクトラム(%表示で重症度)
まとめ:多軸診断が廃止。カテゴリー診断+ディメンション診断へ。連続性を強調。
(2)精神遅滞から知的(発達)障害へ
1)精神遅滞(Mental Retardation)から知的(発達)障害(intellectual developmental disorder)に変更
知的(発達)障害の下位
・知的(発達)障害
・全般性発達遅延 諸領域で遅れがあり,5歳以下などまだ幼いので,十分で正確な知的発達評価ができない場合
・特定不能の知的障害 諸領域で遅れがあり,5歳以上でも,十分で正確な知的発達評価ができない場合
▶従来の精神遅滞は知的障害と適応障害の両者が存在すること,知能の高低によって重度分類が行われて来た
⇨DSM-5では知的障害と適応障害の両者が存在する+重症度の評価の指標に生活適応能力の重視+単なる知能指数での分類はしない
・学力領域(Conceptual domain),社会性領域(Social domain),生活自立能力(Practical domain)にかんして,具体的な状況から重症度の判定
2)コミュニケーション障害
下位の言語障害(Language disorder):従来のコミュニケーション障害
表出型,表出受容型の区別がない(理解はよいが表出がダメ,理解も悪く表出もダメ)
→度精神発達障害の幼児期の症状の可能性
DSM-5の言語:話し言葉,書き言葉,サイン言語なども含まれる(聴覚障害も考慮可)
3)運動障害
従来の運動能力障害+チック障害
4)発達障害とAD/HD(注意欠如/多動性障害)
正式に発達障害に区分
症状発言年齢が,7歳以前から12歳以前に引き上げ
17歳以上では5項目を満たせば良いと診断基準が緩和
(3)自閉症スペクトラムについて
広汎性発達障害(Prevasive Developmental Disorder : PDD)から自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder : ASD)へ
(資料に詳しい)
(4)哺育と摂食の障害
過食症が正式に追加
幼児期または小児期早期の哺育,摂食障害と成人の摂食障害がひとつに。
数値的指標はないがBMI18.5がひとつの基準に?
(5)重度(破壊的)気分調整不全障害(Disruptive Mood Dysregulation Disorder)
6歳から17歳までのうつ病状態
1年以上続く子供の苛々や癇癪(週に3回以上の癇癪)。
周期的な癇癪は双極性障害と考えられてきたが,多く診断されすぎる
→重症気分障害(SMD)の概念が出現
まとめ:双極性障害の過剰診断を防ぐ目的に
主要な症状は5つ。
妄想,幻覚,解体した思考・会話,ひどくまとまりのない言動または緊張病性の行動,陰性症状
いずれもはっきりとしない→失調型(人格)障害
妄想だけ有する→妄想性障害
1つ以上が認められ1ヶ月以内に完全に回復→短期精神病性障害
統合失調症の診断基準は満たすが,6ヶ月以内に基準を下回る→統合失調症様障害
6ヶ月を越える→統合失調症
1)大うつ病性障害のDSM-Ⅳでは除外診断であった死別反応(親愛なる人の死から2ヶ月以内の反応)が,「正常な死別反応と思われるものに大うつ病エピソードが重畳することがある」に変化
2)抑うつ障害は双極性障害と明確に区分。気分障害という用語は拝された
(8)不安障害と強迫関連障害
1)不安障害
・強迫性障害を除
・外傷後ストレス障害を除
・急性ストレス障害を除
・パニック障害と広場恐怖を独立
・広場恐怖,特定の恐怖症,社会不安障害の診断基準から18歳以上を除
2)強迫関連障害
・強迫性障害が強迫関連障害に
・身体醜形障害は,身体表現性障害から強迫関連障害へ移動
・溜め込み障害が新設
・抜毛症,自傷性皮膚障害(excoriation disorder:皮膚のかきむしり)を追加。
(9)物質関連および嗜癖障害
・カフェイン離脱,大麻離脱が追加
(10)人格障害
・DSM-Ⅳの診断枠
(11)PTSD
DSM-Ⅳでは瀕死体験と無気力という項目あり
→DSM-5では無気力を除(合理的に活動できる人もいるがPTSDであることも)
惨事ストレスの追加(9.11以降の研究による)
回避と麻痺→回避症状と認知の否定的気分の変化に
過覚醒症状に「向こう見ずな自己破壊的行動」の追加
(12)神経認知障害(Neurocognitive Disorder)
Neurocognitive Disorderはせん妄,認知症,健忘,および他の認知障害の概念を継承したもの
診断の確かさらしさの判断基準の一つに生物学的指標(遺伝子変異,CT,MRI,PET,SPECTなど)を用いる
病因別亜型分類として特定(病因:アルツハイマ-病,前頭側頭葉変性,レビー小体病,血管性,外傷性脳損傷,物質/投薬誘発性,プリオン病,ハンチントン病,パーキンソン病,HIVなど)
アルツハイマ-病,前頭側頭葉変性,レビー小体病,血管性疾患,パーキンソン病に関しては診断に「ほぼ確実(probable)」と「疑い(possible)」をつけることに
(13)Paraphilic(性的倒錯)の名称変更→Paraphilic Disorders
参考文献:臨床家のためのDSM-5虎の巻
編集:森 則夫 杉山登志郎 岩田泰秀
予想どおりに不合理(ダン・アリエリー)早川書房 読書中
行動経済学という学問があります。
従来の経済学とは,少し違って,不合理な人間(普段の人々)がどう経済行動を行っており,その結果経済活動(大きな動き)を生むのかを考える学問と言えます。
言い方を変えると,従来の経済学では合理的な人間を想定し,その合理的な行動の結果の経済活動(大きな動き)を考えていたといえます。
どちらがより現実に近いかという視点から考えると行動経済学といえます。
ただ,どちらが優れているかという問いには,明確な答えがありません。というか,そういう問いが立たない,もしくは場面ごとにその問の答えが変わると言えます。
実際の人間の行動から,人の経済活動を捉えたいんだという場合は,行動経済学でしょうし,いやいや,大きな枠組として,経済活動を説明したい,その場合は,数理的にモデル化して,どうこうしたいという場合は,従来型の経済学を選択することに成ると思います。
もちろん,前者が後者の目的を達成しようとすることもできるし,その逆もしかりです。
と前置きが長くなりましたが,タイトルの
予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ダンアリエリー,Dan Ariely,熊谷淳子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/08/23
- メディア: 文庫
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は,その行動経済学の読み物になります。
以前,この本のハードカバーもソフトカバーも増補版も購入したのですが,やっぱり文庫本ば持ちやすいと思い,購入しました。
行動経済学は,経済学の考え方に心理学のエッセンスが入った学問でもあります。
ダニエル・カーネマンは行動経済学の理論を発表しノーベール賞を受賞しましたが,その実験手法は心理学ですし,ダニエル・カーネマンは心理学者です。
ノーベル賞に心理学賞がないので経済学で受賞したんだと思います。
で,タイトルのダン・アリエリーは,ノーベル賞ではなくイグノーベル賞を受賞しています。イグノーベル賞に入るくらいインパクトの大きい発表があったということです(いままでの研究を総合してでしょうが)。
その研究内容が手のひらで読める,ということで,なんだか宣伝ぽいですが,読書中の書籍を紹介しました。
なお
が近日発売予定です。
購入書籍
ご無沙汰しています。
できるだけブログを更新したいのですが,私事にかまけなかなか書けない日が続いています。
今日は,購入した書籍の紹介。
です。
DSMは日本において現在
DSM4TRというものが使われています。
DSMの4番で,その改良だよって意味ですが,そもそもDSMとはなにかを説明します。
DSMとは「精神障害の診断と統計の手引き」でアメリカ精神医学会の診断指針です。
ざっくり言うと,病院に来た患者さんの診断名をつけるのに参考にする教科書みたいなものです。
もっとざっくり言うと精神障害に分類される病気の診断基準がたくさん載っている本です。
注目するところは,アメリカの精神医学であるということ。
一応,ICDという国際疾病分類(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)っていうのもあってこっちはWHOが分類している。けど,こっちは精神障害だけではなく全部の病気を網羅しているんです。精神医学だけに限定するならDSMの方がスッキリかなと思います。
ちなみにDSMは,ICDの精神および行動の障害の章とほぼ同じとされていて,行政関係はICDでの表記採用していたりします。
例えば,障害者手帳の申請とか更新とかで書類に記載する時はICDだったと思います。
で,なんでいまさらDSMの本を買ったのかというと,
今回,アメリカでは4から5へ生まれ変わったんですね,DSM。
そうなると,日本でも利用している診断基準だから,日本でも大きな影響を受けるわけです(自分は診断しないですが。診断できるのはDrだけ)。
翻訳などは日本精神医学会が頑張ってるんだと思うんですが,その前にどこがどう変更されたのか知りたくて購入しました。
英語の原典読めばいいんですが,英語が得意じゃないのと,書籍が高いのとでこちらの本を参考にすることにしました。まだこれからですが,変更点がまとまっていそうで期待大です。
リストカット(自傷行為)をする人
本当は,新型うつに関して書こうかなと思っていたけど,少し前に,リストカットするメンヘラには周りは注意した方がいいというツイートを見かけたので,リストカット(自傷行為)する人について書きます。
上記のツイートは,多分ですが一般的(心理臨床的?)にボーダーと呼ばれる人を指しているのではないかなと推測します。違うかもしれませんが。
まず,ボーダーとは何かから。
ボーダーとはボーダーラインパーソリティ障害の略です。境界性人格障害の方が馴染みがある方もいると思います。
どういう障害かというと,人と接するときに少し一般的な反応や判断からズレている,そのことで自身が混乱したり,周りが困ったりする状態になるというものです。
だいぶ大雑把ですが。
他の人と仲良くしたい,けど,裏切られるのが極端に怖いという,矛盾を極度に抱えているとも言えるかもしれません。
例えばですが,彼氏が疲れて電話にでれないという状況を考えてみます。
大体の場合,なんで出ないのだろう,なにかあったかな。心配だな。そんな感じに成るのではないでしょうか。
しかし,ボーダーの方は,もう少し不安定で,また「見捨てられ不安」を抱えていることが多いので「私は嫌われた。振られたんじゃないか。もうダメだ。別の彼女がいるのではないか」と不安になり,メールを連発したり,家に押しかけたり,または自室で悩みこんだり,場合によっては自傷行為に至る人もいます。
仲良くなりたい相手を過度に理想化してしまうことも多く,ちょっとした事で相手が理想から外れると不安になり,その不安を相手にぶつけてしまうことも多いように思います。
少し極端に書きましたし,足りない点も多いですが,ツイートされた方は,こういう人物を想定されたのではないかなと思います。
(ここでは極端な部分だけ書きましたが,今まで接してきたボーダーラインパーソリティ障害と思われる方たちは,殆どが真面目で,頑張り屋さんな気がします。その頑張りがから回ってしまい,本人を傷つけたり,周りが困ったりしている。反面,頭の回転も早く,理解すると環境調整もできる方が多いので,ちょっとした本人の気付きで,生活が楽になる方も多いような気がします。本人も不安になりたくてなっているわけではないのでほんとうに大変な毎日だと思います。)
しかし,自傷行為をしているからといってボーダーラインパーソリティ障害ではないですし,ボーダーラインパーソリティ障害の人が全て自傷行為をするわけではありません。
自傷行為をする人が気を引くために見せてくる,周りが心配しているのを嬉しがっているという表現も見かけます。
もちろん,そいう部分がないわけではないのですが。。。
自傷行為をする人の多くは,そもそも人に自傷行為をしていることを知られたくないと思っているという調査研究があります。
自傷行為を恥と思い,またそうしなければならない状況や自分を責めている人が多いということです(国立精神神経センターの松本先生のご著書に詳しいです)。
そもそも,自傷行為はなぜしているのか。
人に見せたいからではなく,ストレスコントロールのためと考えられます。
松本先生の言葉を借りれば,生きるためにリストカットする。
死にたくなるほどのストレスを感じた時,切ることで,安心する。
脳内に麻薬に似た物質が一時的の放出され,気が休まる状態になるようです。
しかし,麻薬同様,使えば使うほど効き目が弱くなるため,何度も切ったり,最初は浅かった傷が深くなることもあります。
場合によっては事故死,また傷の手当をしないという(これも自傷行為ですが)によって組織が壊死していくという人もいます。
(死にたいほどのストレスなので,場合によっては自殺することもあります。自傷行為をしている人は自殺しないというのは,迷信といえるかもしれません)
これらは基本的にばれないように行っています。しかし,何らかの形で,自傷行為がバレてしまった,そして,その時の周りの反応が,自分が思っているより大きかったりすると,それ以降,その大きな反応(いままでは何もできない自分,ダメな自分が他者に影響を与えている事実)が得たい(無意識の場合もあります)ということで再度行い,再度周りに見せようとするということが見受けられるのだと思います。
この場合,相手にしないという方法が取られがちですが,それは急にはしごを外された状態いえます。
少しずれますが,例えば,1日風邪で寝込んでいた,翌日も高熱で動けなくなった,という場面を想定します。1日目は,ご家族や恋人が心配し,優しく看病してくれていた。しかし,翌日も同じように辛い,場合によっては前日よりも辛いのに「はいはい,わかったわかった」と対応されたらどうでしょう。すごく心細くなるような気が,自分はします。
いきなり距離を置くのではなく,
そういう行為ではなくてもあなたのことに関心があること,そうじゃない方法でうまくストレスを解消してみようという話をしていくこと
つまり,適切な距離で,相手のストレスコントロールの成長を見守ることが大切なのではないかなと思います。
なので,リストカットする人とは距離を置けと読めるようなツイートがあって,寂しいなと思い,今回ブログに書きました。
蛇足ですが
自傷行為をしやすい心の病はボーダーラインパーソリティ障害以外では,うつ病や双極性障害(躁うつ病)などの気分障害,統合失調症,解離性障害,他のパーソナリティ障害,物質関連障害(アルコールを含む)などがあります。
うつ病は怠けなのかなぁ
学校に行きたくない,会社に行きたくないということは多くの人が経験していることだと思います。
でもなんとか登校したり出社しているわけですね。
それでも辛い時は,学校に行きたくないからと電話したり,有給休暇を使ったりしますよね(しない人もいますが)。
うつ病の人はどうなのか。
うつ病(抑うつ)の人を身近に見たことがあるし,仕事柄お会いするので,その人達の話を総合すると,これは会社に行けないよねと,そう思います。
例えば
朝起きると,まだ出社の2時間も前とわかる。布団の中で,仕事がうまく出来るか不安になり,もう一度寝ようとするけど寝れない。
出社時間の30分前になっても体が動かない,起きようとしているのに,上半身が起きただけで立つことができない。
なぜか涙が止まらない。
出社できない,登校できない。
どうしたら良いかわからない。
いきなりこんな状態になっているわけではないのですが,日々,我慢したことで,頑張りすぎて一線を超えてしまった,そんな状態といえます。
じゃあ,こうなる前に,もっと前に,ストレス発散しておけよと思うかもしれません。
しかし,多くのうつになった人は,初期にストレスを感じ,そのストレスを自分で発散しようと考え実行していることが多いです。
でも,うまくいかない。
それをも超える状況・事態がのしかかり,結局はぐしゃっとなってっしまう。
話を聞いていて,多く聞くなーと思うのは,
「最後は○○さんの一言だった」「○○さんがわかってくれていたんですけど……」という感じのことです。
この一言が出てくるのはカウンセリングの結構後のほうですが。
どうも他人のせいにするのが苦手な方が多いようで(自己責任と思いすぎ?),結構出てこないんですが,最後の引き金は同僚や,友人,上司,先生からの(本人からすれば信頼を失うような)一言だったりします。
それまで本人は,本人なりに仕事や学校の勉強,家庭内のストレスとかいろいろ対処しているのですが,それがわかってもらえなかった,頑張ったのに誰も見てくれていなかったということで,支えがスポンとなくなっちゃうように思います。
こういった人たちを見てきているので
うつ病は怠けているという意見には否定的です。
もちろんケースバイケースということもあるでしょうが。
多くの人が未だ,うつ病は怠けと言っているのは
自分が辛い時休んだ経験や,休もうとしたけど行けたという経験から推測してだと思います。
推測は正しいです。でもそれはうつが重くなる前までなのです。
最後の一線を超える前までは,うつは怠け,もっと頑張れという考えで頑張ってしまったケースも多いと思います。で超えて,頑張れなくなる。
僕が関わったうつの人たちは,そんなふうに見えました。
蛇足ですが
うつ病の人は治ろうとすることに貪欲な気がします。早く良くなりたい,そう思っているようです。
真面目すぎて,壊れていってしまったものがあるのかもしれません。