sukimapsy's blog

雑談,雑記ですが基本心理屋さんなので,心理学のことを書いていこうと思っています。基礎と応用の隙間を行き来する心理屋さんです。とある大学の非常勤講師です。で,臨床心理士でもあります。

リストカット(自傷行為)をする人

本当は,新型うつに関して書こうかなと思っていたけど,少し前に,リストカットするメンヘラには周りは注意した方がいいというツイートを見かけたので,リストカット自傷行為)する人について書きます。

 

上記のツイートは,多分ですが一般的(心理臨床的?)にボーダーと呼ばれる人を指しているのではないかなと推測します。違うかもしれませんが。

 

まず,ボーダーとは何かから。

 

ボーダーとはボーダーラインパーソリティ障害の略です。境界性人格障害の方が馴染みがある方もいると思います。

どういう障害かというと,人と接するときに少し一般的な反応や判断からズレている,そのことで自身が混乱したり,周りが困ったりする状態になるというものです。

だいぶ大雑把ですが。

 

他の人と仲良くしたい,けど,裏切られるのが極端に怖いという,矛盾を極度に抱えているとも言えるかもしれません。

 

例えばですが,彼氏が疲れて電話にでれないという状況を考えてみます。

大体の場合,なんで出ないのだろう,なにかあったかな。心配だな。そんな感じに成るのではないでしょうか。

しかし,ボーダーの方は,もう少し不安定で,また「見捨てられ不安」を抱えていることが多いので「私は嫌われた。振られたんじゃないか。もうダメだ。別の彼女がいるのではないか」と不安になり,メールを連発したり,家に押しかけたり,または自室で悩みこんだり,場合によっては自傷行為に至る人もいます。

 

仲良くなりたい相手を過度に理想化してしまうことも多く,ちょっとした事で相手が理想から外れると不安になり,その不安を相手にぶつけてしまうことも多いように思います。

 

少し極端に書きましたし,足りない点も多いですが,ツイートされた方は,こういう人物を想定されたのではないかなと思います。

 

(ここでは極端な部分だけ書きましたが,今まで接してきたボーダーラインパーソリティ障害と思われる方たちは,殆どが真面目で,頑張り屋さんな気がします。その頑張りがから回ってしまい,本人を傷つけたり,周りが困ったりしている。反面,頭の回転も早く,理解すると環境調整もできる方が多いので,ちょっとした本人の気付きで,生活が楽になる方も多いような気がします。本人も不安になりたくてなっているわけではないのでほんとうに大変な毎日だと思います。)

 

しかし,自傷行為をしているからといってボーダーラインパーソリティ障害ではないですし,ボーダーラインパーソリティ障害の人が全て自傷行為をするわけではありません。

 

自傷行為をする人が気を引くために見せてくる,周りが心配しているのを嬉しがっているという表現も見かけます。

もちろん,そいう部分がないわけではないのですが。。。

 

自傷行為をする人の多くは,そもそも人に自傷行為をしていることを知られたくないと思っているという調査研究があります。

自傷行為を恥と思い,またそうしなければならない状況や自分を責めている人が多いということです(国立精神神経センターの松本先生のご著書に詳しいです)。

 

そもそも,自傷行為はなぜしているのか。

人に見せたいからではなく,ストレスコントロールのためと考えられます。

松本先生の言葉を借りれば,生きるためにリストカットする。

 

死にたくなるほどのストレスを感じた時,切ることで,安心する。

脳内に麻薬に似た物質が一時的の放出され,気が休まる状態になるようです。

しかし,麻薬同様,使えば使うほど効き目が弱くなるため,何度も切ったり,最初は浅かった傷が深くなることもあります。

 

場合によっては事故死,また傷の手当をしないという(これも自傷行為ですが)によって組織が壊死していくという人もいます。

(死にたいほどのストレスなので,場合によっては自殺することもあります。自傷行為をしている人は自殺しないというのは,迷信といえるかもしれません)

 

これらは基本的にばれないように行っています。しかし,何らかの形で,自傷行為がバレてしまった,そして,その時の周りの反応が,自分が思っているより大きかったりすると,それ以降,その大きな反応(いままでは何もできない自分,ダメな自分が他者に影響を与えている事実)が得たい(無意識の場合もあります)ということで再度行い,再度周りに見せようとするということが見受けられるのだと思います。

 

この場合,相手にしないという方法が取られがちですが,それは急にはしごを外された状態いえます。

少しずれますが,例えば,1日風邪で寝込んでいた,翌日も高熱で動けなくなった,という場面を想定します。1日目は,ご家族や恋人が心配し,優しく看病してくれていた。しかし,翌日も同じように辛い,場合によっては前日よりも辛いのに「はいはい,わかったわかった」と対応されたらどうでしょう。すごく心細くなるような気が,自分はします。

 

いきなり距離を置くのではなく,

そういう行為ではなくてもあなたのことに関心があること,そうじゃない方法でうまくストレスを解消してみようという話をしていくこと

 

つまり,適切な距離で,相手のストレスコントロールの成長を見守ることが大切なのではないかなと思います。

 

なので,リストカットする人とは距離を置けと読めるようなツイートがあって,寂しいなと思い,今回ブログに書きました。

 

 

 

蛇足ですが

自傷行為をしやすい心の病はボーダーラインパーソリティ障害以外では,うつ病双極性障害躁うつ病)などの気分障害統合失調症解離性障害,他のパーソナリティ障害,物質関連障害(アルコールを含む)などがあります。